改善や生産改動におけるROIC(投下資本利益率)
ROIC経営
バブル経済崩壊後あたりから、「ROIC経営」など指標としてROICが非常に重視されています。皆様ROICを理解されていますでしょうか?経済学に精通された方が非常に詳しく解説されているのをよく見かけます。しかし難しいものが多く、理解できる方は専門的性のある一部の方に限られると思います。一方、ROICの本質は企業や工場の経営層はもちろん、管理者や一般の従業員にまで及ぶ重要な概念を含んでいます。ここでは、その概念部分に絞って解説したいと思います。
さっそく上の図にROICの概念を表してみました。この図の場合はある製品を製作する工場の場合です。工場での製作に、設備を購入したり人をやとったりするのに資金が必要です。その資金は一般には株主や銀行から調達します。もちろん、株主や銀行はボランティアでは貸してくれません。配当金や利子としてのリターンを期待するわけです。すなわち、ROICは企業(工場)に預けたお金がどの程度増えてかえってきたかの割合を示す指標です。式にすると次の通りになります。
経常利益だけではだめなのか
「ROIC」が重視される前は、「経常利益」が世間では重視されていました。しかし、経常利益の指標には大きな問題があります。例えば、株主や銀行から多額のお金を集めて設備投資を行い、売り上げとその利益が投資額に比べて上がらなかった場合です。集めたお金の多くは、設備や在庫に代わっていますので決算上は黒字になります。しかし、帳簿上は設備や在庫として計上されているものが、将来お金なって戻ってくるかは微妙です。もし銀行などへの借金の返済が滞れば倒産となります。いわゆる「黒字倒産」です。同じ経常利益の額でも、身の丈のあった投資の結果なのか、無理な投資の結果なのかで雲泥の差があります。一方ROICで見ると後者は0に近い値を示していることが確認できます。設備投資のまずさが一目瞭然というわけです。
高度成長期において日本では「借金も財産のうち」と言い多くのお金をあつめて、効率を気にせずにどんどん設備などに投資して企業や工場を成長させてきました。世間はインフレでしたので、多少の無茶なら借金は目減りして問題にならないことが多かったのです。経済が成熟した低成長時代の現在ではそういうわけにはいきません。できるだけ小さな投資で大きなリターンを生み出さないと生き残るのは困難です。
身近な改善や生産改動におけるROICの意味
皆様の企業ではROICを悪化させる次のようなことが行われていませんか?
- 改善活動時によく考えずに購入した設備が使いにくく使われなくなる
- 設備導入したが、そのあと工程を見直した結果その設備が不要になった
- 大型受注で設備導入したが、設備を使う続く案件がすぐになくなった
- メカ大好きな担当がほとんど必要がない高機能がついた設備購入を計画
- 高額設備が遊んでしまうので見込み品を製作
- 使用する時期を考えずにどんどん購入
上記のようにならないためには、次のことを気にしましょう。
- お金がかからない改善はすぐに実行
- 設備投資をともなう改善は後回し
- 設備投資は2~3年で元をとることを心掛ける
- 設備等に必要な機能は吟味(趣味でものは買わない!)
- 売れる見込みのないものを作らない
- 必要以上に早く購入しない
どうでしょうか?ROICは身近な生産活動にかかわる重要な概念なのです 。
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