多能工化とスキルマップ
少量生産が主体の日本においては、個々が特定の機械や狭い工程範囲のみを担当していたのでは、仕事の山谷が激しくなり工場運営がなりたたなくなってきています。これを克服するのは、個々が多くの機械や広い工程範囲を担当することが重要です。ではどうすればよいのでしょうか。
多能工を育てる
多能工化が進んでいない工場を例に重要性を考えてみましょう。例えばある製品加工の仕事が工場に断続的に舞い込んでいるとします。工場には数名の作業者がいますが、内Aさんがいつもその加工を行っており、ほかの人の半分くらいの時間でできるとします。誰に仕事を割り振るのが効率的でしょうか。もちろんAさんですよね。今だけでしたら。
少し考えてみてください。逆に言えばAさん以外は倍も時間がかかる状況なのです。Aさんの手がまわらない時は一気に生産性が半分に落ちる危うい状況です。また、Aさんの後工程を担当する人がいれば、後工程担当者はAさん待ちが頻繁に発生してしまいます。もちろんAさんが後工程も担当する多工程もちが効率的ですが、Aさんは一人しかおらず手が回りません。このように保有する技能が特定のメンバーに偏っていると、生産性が悪くなりやすいのです。
なおこれまでの経験で多いのは、他に溶接作業の仮付溶接と本溶接を別々の作業者がやっている例でした。本溶接ができる作業者は高度な技能が必要ですので、本溶接に集中させたいのは理解できます。しかし、仮付溶接と本溶接を頻繁に繰り返す職場においては得策ではありません。溶接をするたびに移動を繰り返すことが多いですし、仮付溶接完了まちが頻発します。本溶接の時間を増やしたいのに、移動と手待ちの時間が増えてしまいます。このように、多能工を育てることは重要課題だと言えます。
スキルマップをつくろう
多能工を育てるにはまず現状把握からです。上側に作業者名、左側に習得すべきスキルをいれましょう。左側の習得すべきスキルの並び順は、その職場での一般的な製品の流れにそってできるだけ並べます。そして、それぞれの現状レベルを数値化して評価します。例えば
0:できない 1指導のもとできる 2できる 3指導できる
などです。
育て方を考える
①技能者が手薄なところを見つける
受注や引き合いがあるにも関わらず、技能者がすくない箇所は問題です。そのような技能が何かをまずは見つけましょう。
②同種の技能の幅を広げる
同種の技能は獲得しやすいかと思います。例えば現在メインとする技能が機械加工なら、多くの機械が扱えるようにして、①で見つけた穴をうめましょう
③多工程持ちができるようにする
前後の工程ができるようになれば、設備レイアウトを工夫することで、手待ちや移動のムダがなくなり一気に効率化がしやすくなります。スキルマップを製品の流れに沿って並べるのはこれが目的です。
教育計画をつくる
向こう1年間から数年間に、誰に何をいつ教育するかを計画します。座学もあるみっちりとした教育が理想ですが、OJTだけでもまずは構わないと思います。ただし、教育期間はどうしても生産効率が落ちます。それを将来への投資、必要コストとしてとらえることが重要です。また、定年等で退職者が発生することへの考慮も忘れないでください。
OJT(On-the-Job Training) 先輩社員が後輩について実務で教える教育
人材確保
現状の人員で対応しきれない場合は、新たな人材を確保しなければなりません。適正のある人材をしっかりと捕まえることが重要です。お互いに面識があり相思相愛の人材候補が身近にいればいいのですが、そうとばかりはいきません。近年少子化の影響で人手不足の問題が顕著になってきています。私がお勧めできるのは次の2点です。
①インターンシップ受入
私も以前インターンシップ受入担当をやったことがありますが、学生が会社の中に少し入ることで、会社の良い所悪い所が肌身に感じることができたのではと感じています。もちろん、お互い多少よそゆきの顔にはなりますが、企業案内のパンフレットよりも数段上かと思います。
②ウェブサイトでの企業情報発信
現在就職先を考えている多くの方は、企業情報をまずはネットから得ていると思います。
ウェブサイトに求人者に対するアピールがあるかないかで大きな差ができます。少なくとも簡単でもよいのでウェブサイトをもつことはお勧めします。
https://tu-ju.com/2019/06/02/post-386/ 中小・個人事業者向けウェブサイト構築‐年間約千円からできる
https://tu-ju.com/2019/06/03/post-408/ 自分たちでウェブページ作成
また一定規模以上の企業の場合は、より本格的な情報発信をする必要があります。
参考
グーグルがしごと検索を始めたようです。中小企業でも自社のウェブサイトと連携させることで採用の幅が広がりそうな気がします。また早速、グーグルしごと検索向けのサイトを構築する会社も現れました。まだ始まったばかりで評価は定まりませんが、興味のある方は見てください。
人は財産、多能工は宝
多能工は育てることが生産効率を大きく左右する最重要課題だといえます。適正のある人材を捕まえ効率よくしっかりと教育できない企業は、少量生産が中心の日本では生き残れないでしょう。
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